「婚姻」があれば当然、その解消である「離婚」があります。
今回は前回に引き続き離婚届について紹介したいと思います。
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離婚とは?
離婚とは有効に成立した婚姻関係を、当事者の意思に基づいて将来に向かって解消することとされています。
「協議上の離婚」と「裁判上の離婚」
離婚には大きく2つの形態があります。
協議上の離婚
当事者の協議により届け出ることによって効力を生ずるものです。
離婚意思の合致と届出により成立します。
いわゆる、当事者がそれぞれ離婚の判を押して提出するドラマなんかで出てくるやつです。
裁判上の離婚
当事者間で離婚意思の合意ができない場合に、離婚しようとする人が裁判上の手続きによって離婚をすることができます。
具体的には調停離婚、審判離婚、判決離婚、和解離婚、認諾離婚と様々なものがあります。
これは、芸能人なんかがよくやっているイメージですかね・・・。
参考 「協議上の離婚」と「裁判上の離婚」の割合
平成21年度 厚生労働省「離婚に関する統計」によれば、
88%・・・協議上の離婚
12%・・・裁判上の離婚
となっています。
少し古い統計なので、参考程度にご覧ください。
平成21年度当時に比べて平成29年度現在の方が裁判上の離婚の手続きが増えたのではないかと予想しています。
協議上の離婚
協議上の離婚は当事者の合意のみにより離婚届を提出すれば成立するものです。
ただし、離婚の意思が届出作成時と提出時の双方で必要です。提出時に当事者のいずれかが「やっぱり離婚したくない。」となった場合には離婚は無効です。
裁判上の離婚
「調停離婚」
離婚の訴えを起こそうとする人はまず、家庭裁判所に離婚の調停の申立てをしなければなりません。(調停前置主義といいます)
これによって離婚の合意が成立して、調停調書に記載がされた場合には「調停離婚」の成立となります。
「審判離婚」
調停が不調に終わった場合でも、家庭裁判所は離婚の審判をすることができ、異議申立てが無い限り、審判が確定して離婚が成立します。これが「審判離婚」です。
「判決離婚」「和解離婚」「認諾離婚」
これは上記で解決できなかった場合に離婚を訴訟という形で争うことになります。
ただし、訴訟により離婚を提起する場合には以下に掲げる事由のいずれかを満たす必要があります。
①配偶者に不貞な行為があったとき。
②配偶者から悪意で遺棄されたとき。
③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。(離婚確定後に生存が判明しても離婚は有効)
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
裁判所は、上記のような事由がある場合でも、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認める場合には離婚の請求を棄却する場合もあります。(民法第770条)
裁判所から離婚確定の判決が出た場合は「判決離婚」、訴訟における和解は「和解離婚」、認諾調書に記載した場合は「認諾離婚」の成立となります。
参考 有責配偶者からの離婚請求
浮気をした夫自身から妻に離婚を請求できるでしょうか?
判例(昭和62.9.2)によれば、
①相当長期間の別居
②未成熟子の不存在
③相手方配偶者が過酷な状態に置かれている等著しく社会正義に反する特段の事情の不存在
以上①から③までの場合には請求しても良いとの判断を示しました。
離婚届の提出方法
離婚届の用紙
これは全国の市区町村役場で無料で配布しています。書き損じの場合に備えて2枚以上もらっておきましょう。
また、離婚後も婚姻後の氏を名乗り続けたい場合には「離婚の際に称していた氏を称する届」の用紙ももらう必要があります。(詳しくは後日紹介します。)
届出人
離婚する当事者
証人
成年の証人2人以上が届出書に署名押印しなければなりません。
これは、友達や知り合いでも構いません。
届出先
離婚する当事者の住所地もしくは本籍地
必要書類
離婚届
裁判上の離婚の場合は相手方の記名押印は不要です。
本人確認書類
運転免許証、旅券、マイナンバーカードなど
印鑑
認印でも大丈夫ですが、シャチハタ印は受理されない可能性があります。
戸籍謄本
裁判上の離婚(調停離婚、判決離婚など)の場合必要になります。ただし、本籍地に提出する場合は不要となります。
調停調書の謄本
調停・裁判が成立すると裁判所で取得できます。
判決確定証明書
裁判離婚の場合で判決確定後に裁判所に申請します。
離婚届の記載例
出典:法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/ONLINE/FAMILYREGISTER/5-3.html)
届出年月日、届出宛先
届出をする日付を記載します。
届出宛先は提出市区町村長を記載します。
(例)東京都千代田区長、千葉県牛久市長など
氏名生年月日欄
夫と妻双方の氏名生年月日を記載します。
漢字の字体は戸籍に記載されたとおりに記載しましょう。
(例)斎藤、斉藤、齋藤の違いなどに注意しましょう。
住所欄
この欄の住所と世帯主は住民票に記載されているとおりに記載しましょう。
(例)大字の表記や地番の表記なども正確に記載します
大字高田1234番地、高田1丁目2番3号など
本籍欄
ここには戸籍簿に記載された本籍地と筆頭者を戸籍簿のとおり記載します。
住所欄同様に本籍地の表記に注意しましょう。
父母の氏名、父母との続柄
父母の離婚届提出時の父母の氏名を記載しましょう。両親が離婚などで氏名が変わっている人は注意が必要です。
(例)続柄の記載例
長男、二男、長女、三女など
離婚の種別
該当する箇所に☑を入れましょう。
また「裁判上の離婚」の場合には、成立・確定した日付も記入しましょう。
離婚前の氏にもどる者の本籍
これは、婚姻時に氏が変更になった人が離婚後にどこに本籍を設けるかを記載する欄です。
「☑もとの戸籍に戻る(復籍という)」の場合には婚姻前の本籍地筆頭者を記載します。
「☑新しい戸籍をつくる」の場合には、自分単独で新しい戸籍を設けるということになりますので、新しく本籍を置く任意の場所と自分の名前を筆頭者名の欄に記載します。
※注意
また、上記以外にも婚姻時の氏を引き続き名乗り続けることもできます。その場合には、離婚届に「離婚の際に称していた氏を称する届」を添えて提出する必要があります。その場合にはこの欄は記載不要です。
この欄は、戸籍法の複雑な規定に基づいて記載する欄なので、提出前に市区町村役場ぼ担当者に相談することをお勧めします。
未成年の子の氏名
この欄には、2人の間に未成年の子どもがいる場合に記載する欄です。
どちらが親権を持つのかを記載することになります。
※子の親権者の記載のない離婚届は受理されません。
同居の期間
これは同居を始めた年月と別居をした年月を記載します。同居をしたことが無い場合は空欄で大丈夫です。
別居する前の住所
これは、別居する前の住所を記載します。
住民票に記載されているとおりに記載しましょう。
別居する前の世帯のおもな仕事と夫妻の職業
おもな仕事の欄には☑を入れましょう。
職業欄は国勢調査の年にだけ記載が必要となる欄です。
届出人署名押印
ここにはそれぞれの直筆の署名と捺印が必要になります。
同じ氏であってもそれぞれ別の印鑑を使用しましょう。
ただし、裁判上の離婚の場合は相手方の署名捺印は必要ありません。
証人欄
20歳以上の成人2人に記載してもらいましょう。
この欄は、友人や知り合いでも可能です。
捨印
捨印を夫妻それぞれ欄外に押印しておくといいでしょう。
まとめ
いかがでしょうか?
婚姻をする時よりも離婚するときの方が様々な要件があって難しいと思います。
不明な点は必ず、提出先の市区町村役場に聞いてから提出しましょう。
特に、婚姻後の氏や本籍地の選択、未成年の子の親権に関する事項は注意が必要です。